人間の価値は、愛や夢抜きにして語る事が出来るのだろうか。人は愛や夢があるうちは、それだけで生きていける気になるが、その両者に裏切られた時、何もかもが音を立てて崩れ落ちていってしまうのかもしれない。主人公ジュンは愛に支えられ、夢を追い求め続けていたはずだったが、いつしか愛は彼女を裏切り、そして夢は彼女を蝕むものへと姿を変えてしまった。
苦い恋愛や復讐、踏みにじられた夢や虐待、そして忘れられない過去…インド出身で日本に長年CGアニメーターとして在住しているアンシュル・チョウハンの初監督長編映画「東京不穏詩」では、そんな悲痛な世界を激しくも美しく描いている。今作は、ブリュッセル国際映画祭(2018)でグランプリ、そして主演の飯島珠奈は大阪アジアン映画祭(2018)にて最優秀女優賞を獲得するなど、国内外多数の映画祭で上映や受賞を果たしてきた。そんな「東京不穏詩」は、日本人俳優と海外勢クルーによって手がけられた異色作であり、これは日本の映画界に新風をもたらす存在になるかもしれない。