北斎・歌麿・師宣も描いた春画。その名作が、博物館にふさわしくない!? 21万人もの来館者が殺到した春画展の内幕を描く、傑作ドキュメンタリー!!
日本初の大規模な春画展が、2015年9月、東京の小さな私立博物館「永青文庫」で開幕した。国内外で秘蔵されてきた貴重な春画、約120点を一堂に集めて展示する画期的な試み。3ヶ月の会期中に押し寄せた21万人の来館者のうち、女性が55%、5人に1人が図録を購入するという異例の記録を打ち立て、美術界の話題をさらった。ところが、開催までの道のりは困難を極める。当初は、ロンドンの大英博物館で成功を収めた「春画展」の日本巡回展として企画されたが、東京国立博物館をはじめ国内の公私立博物館20館への開催の打診は、全て断られてしまう。海外で美術品として高く評価されている春画の展示が、なぜお膝元の日本ではすんなりと成立せず、小規模な私立博物館での開催となったのか。映画は、展覧会を成功に導いた人々とともに、“春画と日本人”をめぐる謎に迫っていく。そこには、春画の公開を問題視し、世間から隠そうとしてきた日本社会の、摩訶不思議な《忖度》構造が浮かび上がる。
男女の交わりや色恋を、鮮やかに、のびやかに表現した春画。葛飾北斎、喜多川歌麿、菱川師宣ら当代きっての浮世絵師のほとんどが絵筆を取り、当時最高水準の“彫り・摺り”の技術で生み出された傑作が多い。しかし、明治時代になると、西洋的近代化を急ぐ政府は、春画を徹底的に弾圧。何万の春画、数千の版木が燃やされ、名品の多くが海外に流出した。今では無修正の春画が出版され、書店で誰もが手に取り、購入することができる。だが、実物を美術館に展示することには、見えない壁が立ちはだかるのだ。この映画は、春画展の関係者たちの知られざる苦労と努力を写し取った、貴重なドキュメンタリーである。